02-2-4_01_香料の環境汚染_2021

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2025.12.14更新
環境中に放出された香料は個人レベルの被害を超え、実際に大気汚染の原因になり、水棲生物など生態系に蓄積され、母乳を関して乳児に移行していることがわかっています。環境省は家庭用品から排出されるVOC(揮発性有機化合物)について推計を始めていますが、香料や防虫剤などは大気汚染の原因になっているというエビデンスがありながら、推計の対象外としています。VOCは光化学スモッグの原因物質のひとつで、トルエンやキシレンなど、よく使われるものだけでも約200種類あると言われています。香料の製造には毒性の強いVOCであるトルエンやキシレンが使用され、柔軟剤からもVOCが検出されています。

トルエンやキシレンは中毒性があり、吸引しているうちに依存症を起こし、回復不能の脳障害を起こす恐れがあります。皮膚からも吸収される有毒物質を含む香料入り柔軟剤や合成洗剤などを使用した衣類を肌につけ、「よい香り」を吸引しているうちに香料だけでなく、トルエン中毒になる可能性も考えられます。香料、VOCの環境汚染について、02-1_1_01 柔軟剤・合成洗剤の成分とその問題も合わせてご参照ください。

「有機溶剤は何故毒性が高いの? – 三協化学株式会社」:https://www.sankyo-chem.com/wpsankyo/2227「これらは中毒性があったりシックハウス症候群を起こす原因にもなります。 継続的に吸入したりすると最悪回復不能の脳障害を起こす恐れもあります。 呼吸器や消化器からだけでなく、皮膚にその物質が付着すれば皮膚からも取り込まれやすいため危険性が高いと言われています。(図書館注:「有機」とは炭素を含む化合物という意味であり、安全な物質という意味ではありません。VOC, Volatile Organic Compoundのオーガニックも炭素を含むという意味です)」

数年前から全国で魚介類を食べたら香料臭がしたという事例が報告されています。2025年には瀬戸内海で牡蠣の大量死が起こっています。海の掃除屋といわれる牡蠣は下水処理場を素通りした香料、抗菌剤を長持ちさせるために使われるマイクロカプセルを濾過しているはずです。海水中の合成洗剤や柔軟剤由来の化学物質と牡蠣の大量死の関連を調査するべきではないでしょうか。

中国新聞デジタル『養殖カキ大量死、瀬戸内海沿岸に広がる被害 兵庫「広島と同じ」
地域 2025/11/15』:https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/744169

地島島民約140人の協力のもと、宗像市、シャボン玉石けん株式会社、山口大学大学院創成科学研究科、一般財団法人九州環境管理協会の4者で令和3年9月から3カ月間、生活に使用する洗浄剤を「合成洗剤」から「石けん」へと切り替え、生活排水の変化を調査。結果は、石けんのみ使用する実験期間中廃水処理場の汚泥状況が良好な場合に現れる菌が確認。微生物は多様性を増し、数量なども増加したとのことです。

『令和4年9月27日宗像市地島島民が❝石けん❞を使った実証実験の結果報告会 2022年11月11日』:https://www.city.munakata.lg.jp/kiji003703

実験結果PDF:https://e-asasho.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/10/840fb8e06eb634002ddfd4bca544c499.pdf


下記の研究ブログは、当該技術報告をわかりやすくイラスト入りで説明しています。

Reseachermap 研究ブログ 上野大介 『深海堆積物コアからの人工香料の検出』(2021.6.22):https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/138559/cf51ef3493cff9d0816ed2c77ef2f819?frame_id=730452

要旨:近年,洗剤や化粧品などを含む香り付きパーソナルケア製品(PPCPs)の利用が増加し,合成香料を含む“におい物質”の環境への流出が増加している.本研究では,相模湾および小笠原沖の1400mおよび9200mから深海堆積物コア試料を採取し,におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography-Olfactometry:GC-O)を用いて,ヒト嗅覚による“人為起源におい物質”の検出に取り組んだ.本研究は深海堆積物コア試料のにおい物質をヒト嗅覚によって検出した初めての報告である.分析の結果,6種類の人為起源と推測されるにおい活性が感知された.光の届かない海域に生息する深海生物は嗅覚に多くを依存している.ヒトの嗅覚を用いたGC-O分析の技術を活用することで,“におい物質”が生物へおよぼす影響を評価する「環境におい影響評価」への取り組みが可能になると期待される.

当該技術報告:
J-STAGE 環境化学 2020 年 30 巻 p. 94-99 技術報告『におい嗅ぎGC(GC-O)を用いた相模湾および小笠原海溝の深海堆積物コアを対象とした人為起源におい物質の検索
松元 美里, 野牧 秀隆, 川口 慎介, 古賀 夕貴, 樋口 汰樹, 松本 英顕, 西牟田 昂, 龍田 典子, 上野 大介
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jec/30/0/30_94/_article/-char/ja/

PDFファイル:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jec/30/0/30_94/_pdf/-char/ja


『香水や家庭用洗剤、実は車と同じくらい環境破壊している⁉︎』Bazzar (2018.3.22)

記事より引用「どの家庭にもある香水、塗料、印刷用のインク、殺虫剤、洗剤などの生活用品。実は車の排気ガスと同じくらい環境に悪影響を及ぼすって知ってた?(中略)2018年2月15日、科学系の米ニュースサイト『サイエンス・デイリー』に掲載された論文によると、米コロラド大学ボルダー校の科学者たちはアメリカ海洋大気庁(NOAA)の協力のもと、ロサンゼルスにて生活用品から排出される揮発性有機化合物(VOC)を調査」

https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/daily-life/a60145/lda-perfume-household-cleaners-harmful-to-environment-as-cars-180322-hns/


『Those scented products you love? NOAA study finds they can cause air pollution(あなたの好きな香料入り製品が大気汚染を起こすーNOAAの調査が発見)』National Oceanic and Atmospheric Administration: アメリカ海洋大気庁 Theo Stein (2018.2.15)

記事より引用「NOAAが主催した研究によれば、香水、塗料、その他の香料入り日用品から揮発する化学物質は、ロサンゼルスで車と肩を並べるほどの大気汚染の汚染源となっている」
https://www.noaa.gov/news/those-scented-products-you-love-noaa-study-finds-they-can-cause-air-pollution


『新規有害化学物質「合成香料」によるヒトおよび生態系の汚染とリスク評価に関する研究 平成17年度〜19年度化学研究費補書金 基盤研究(B) 研究成果報告書
平成20年(2008) 研究代表者 實政 勲 (Sanemasa Isao) 熊本大学 自然科学研究科 教授

研究概要より引用「近年人工香料による水質や魚類等の汚染が報告され、その生物蓄積性や環境リスクが懸念されるようになった。本研究は、人工香料による生態系およびヒトへの汚染状況とそのリスク評価を解析した。始めに有明海の海水と様々な栄養段階の海洋生物を採集・分析したところ、ほぼ全ての試料から環状型香料のHHCB(CAS#:1222-05-5)とAHTN(同:21145-77-7)が検出された。(中略)ヒトの脂肪および母乳を採集・分析したところ、いずれの試料からもHHCBが検出され、日本人における人工香料の汚染が初めて確認された。このことは、授乳により人工香料が母子間移行していることを示しており、化学物質に敏感な乳児への暴露リスクが懸念された。また、5種類の合成香料を対象に甲状腺ホルモンレセプターを介した細胞のアッセイを試みたところ、一部の物質がホルモン撹乱作用を有することが明らかになった。(中略)ヒトへの染拡散や乳幼児へのリスク、さらにホルモン撹乱作用の懸念を考慮すると、2003年に改正された化審法の理念を参照して一部の合成香料の製造・使用について何らかの制限を設ける時期に来ている。」

研究概要、研究成果の目録:
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17310038/

熊本大学 研究成果報告書(論文の本文はほとんど非公開)
https://kumadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=21780&item_no=1&page_id=13&block_id=21

熊本大学 研究成果報告書内の本文公開論文:
『Uptake of Benzene and Alkylbenzenes by Cation- and Anion-Exchange Resins from Aqueous Solutions (陽イオン、陰イオン交換樹脂の水溶液からのベンゼンとアルキベンゼンの摂取)』
https://kumadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=22173&item_no=1&page_id=13&block_id=21


環境省は民生品(家庭用品)から排出されるVOCについて推計を始めていますが、芳香剤など家庭用製品、防虫剤、消臭剤、エアゾール噴射剤、香料は「情報の不足」、「その他、自主的取組等に適さないことが明らかなもの 」としてVOCの発生源として推計に含まれていません。なぜ自主的取り組みなどに適さないのか、理由の説明はありません。香料入り製品が大気汚染の原因になっているという米国の公的機関の調査結果があるのですから、VOC削減のためにこれらの香料入り製品も対象に加えてほしいものです。

『[拡張] 揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリについて』揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリ検討会』:https://www.env.go.jp/air/%20air/osen/voc/inventry/2_r2_main.pdf