01-5_1_01 除菌・消毒—無効性と危険性

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新型コロナウイルスに対する防御をしたい、という心理を利用して様々な商品が売られていますが、それらのほとんどは日常的な防御には不要、あるいはコロナウイルスに無効、または健康被害を起こす危険なものです。香害に遭って化学物質に過敏になっている人にとっては一般よりもいっそう深刻な健康被害を起こすので、無意味に化学物質を散布する除菌、過剰な消毒をすることが新たな問題を起こしています。ここでは除菌をうたう製品の無効性、また過剰な消毒の危険性に関する記事を集めました。(2022.5.15)


神奈川県の公式サイトの記事は、除菌・消毒の危険性と石けんの有効さをわかりやすくまとめており、おすすめです。
『除菌や消毒をうたった商品について正しく知っていますか?-新型コロナウイルスに関連して』https://www.pref.kanagawa.jp/docs/r7b/cnt/f370214/p1191458.html


以下は国民生活センターのウエブサイト からの引用です。(除菌や消毒をうたった商品について正しく知っていますか?)

「除菌とは一般に化学的・物理的に微生物を取り除くことをいいますが、その対象や程度は公的には定められていません。一方、消毒とは一般に有害な微生物を除去、死滅、無害化することをいいます。手指の消毒は医薬品や医薬部外品の効能効果にあたるため、医薬品や医薬部外品にしか使えません。…「次亜塩素酸水」とされる商品としては、食品添加物として指定されている「塩酸又は食塩水を電解することにより得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液」(注 9)と次亜塩素酸ナトリウムや塩酸などを混合し希釈した水溶液が販売されています。食品添加物として指定されている次亜塩素酸水は、酸性電解水などともよばれ、食品の殺菌などに使われますが、使用後には、水道水等でよく洗い、「最終食品の完成前に除去しなければならない」とされています。なお、手指の消毒に活用することについての有効性は、現時点では確認されていません…」

かいつまんで言うと、「除菌」をうたう製品は雑貨であり、ウイルスを除去する能力がないということです。人体に猛毒のメチルアルコールを配合したハンドジェル(=雑貨)が回収された事件もありました。また「空間除菌」ができると盛んに広告をしている二酸化塩素を使った製品には効果がないとして消費者庁が誇大広告であるとして措置命令を出しています。WHOも厚労省も米国の疾病対策予防センター(CDC)も空間への消毒薬の噴霧(空間除菌)は推奨されないとしています。

国民生活センターを始め、科学者、医療関係者が流水と石けんを使っての手洗いを丁寧に行うことで、十分に新型コロナウイルスは除去可能、さらにアルコール消毒液を使用する必要はないという見解を出しています。

塩素系製剤である次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)もコロナウイルスを除去することは可能ですが、使用中、またその後に揮発したガスを吸引すると呼吸器に障害を与えます。濃度が高いと死亡することがありますが(このページにある大谷博士の論文参照)以下のとおり通常の濃度で週一度程度の使用でも将来COPD(慢性閉塞性肺疾患)を発症する確率が高いという研究があります。過剰な消毒は人体にダメージを与えるデメリットが大きいのです。殺菌剤(トリクロサン、トリクロカルバンなど19種類)入り薬用石けんが普通の石けんより感染予防にすぐれているという科学的根拠はなく、抗菌成分を長期にわたり使い続けることで健康への悪影響を及ぼす可能性があるということで、米国FDA(Food and Drag Administration)が販売禁止措置をしたことを受け、厚労省も薬用石けんを規制しました。無香料の固形石けんや熱水、日光など安全で効果的な消毒方法を選びましょう。


医療文献検索サービスメディカルオンライン
米看護師健康研究(NHS)データで示す、消毒剤のCOPDリスク (2019.10)
https://www.medicalonline.jp/news.php?t=review&m=nursing&date=201911&file=20191106-JAMA_Network_Open-2-1913563-N.csv

週に一度でも漂白剤やその他消毒薬を噴霧する看護師は、将来COPD(慢性閉塞性肺疾患)を発症する確率が高いという研究です。

「【結論】
消毒剤への曝露は、喘息・喫煙の調整後で看護師のCOPD発症リスクを25~38%増加させた。COPD発生リスクと有意に関連した消毒剤(aHR:1.25~1.36)は、グルタルアルデヒド・漂白剤・過酸化水素・アルコール・第四級アンモニウム化合物であった。
【評価】
単に医療従事者に限らず、消毒剤のCOPDリスクに関する最大の研究である。著者らは、曝露低減戦略の開発や代替手段(蒸気や紫外線など)の検討を呼び掛けている。」

同論文の概要(英文):https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2753247


P&Gの公式サイトにはファブリーズのコロナウイルスへの効果は確認できていないこと、日用雑貨製品のため使用により病気を予防するものではないこと、消毒や殺菌を目的とした製品でないこと、手やドアノブやデスクといった硬い表面、空間に向けてのスプレーはおすすめできないことなどの記述があります。アルコール入りのファブリーズについても「”ファブリーズ アルコール+”は、アルコールを主成分とし消毒殺菌目的につくられた”アルコール消毒液”ではなく、アルコールの配合濃度も違います。コロナウイルスに対する効果も確認できておらず、それを予防をするものではありません。」とあります。ファブリーズはコロナウイルスなどを殺菌する効果はないが、呼吸器に損傷を与える第4級アンモニウム塩が配合されていたこともあるので*コロナ対策には相応しくないと言えるでしょう。(P&Gサイトへは 2021.5.29 にアクセス)
https://sforce.co/2SyV0aB

(元リンク: https://pgconsumersupport.secure.force.com/CarehubStandalone/articles/ja/FAQ/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-Febreze-%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E9%96%A2%E9%80%A3%E3%81%A7%E3%82%88%E3%81%8F%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%8A%E5%95%8F%E5%90%88%E3%81%9B?brand=%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA&country=jp&language=ja#brandListDiv

*米国の有力な環境市民団体Environment Working Group(EWG)の「Hall of Shame of Toxic Household Cleaners(家庭の毒物入り洗剤大賞)」に殿堂入りしたファブリーズ、以前P&Gアメリカのウエブサイト には成分として第4級アンモニウム塩がリストされていました。現在のサイトには記載されていませんが、P&Gは頻繁に成分の配合を変え、商品のバラエティの数が膨大なので配合されている成分については評価のしようがないという危険性もあります。「成分が不明である」ということも、安全性においてはマイナス評価になります。(米国でも日本と同様日用品の全成分公開の法的義務はありません。どんな化学物質がどれくらい入っているかはブラックボックス)
EWGのファブリーズの評価ページ、ファブリーズブランドの膨大な商品ラインアップに「安全」の評価を受けたものはありません。:https://www.ewg.org/guides/brand/6531-Febreze/


危険な次亜塩素酸ナトリウムと適切な消毒
大谷 修 国立大学法人 富山大学名誉教授 学校法人 敬心学園 日本福祉教育専門学校校長 (2019.2.20)
https://ci.nii.ac.jp/naid/130007679788/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vetrdi/3/1/3_1/_article/-char/ja/(このページから論文をダウンロードできます)

「消毒や漂白のために用いられる塩素系製剤はしばしば健康被害をもたらす。塩素系製剤である次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)は水溶液中で加水分解して次亜塩素酸を生じる。この次亜塩素酸が殺菌効果を発揮する。 次亜塩素酸は排水管などの金属を腐食させる。次亜塩素酸ナトリウムはトイレ掃除に使う塩酸や酸性洗剤と反応して有毒な塩素ガスを生じる。塩素ガスを吸引すると、肺水腫などの重篤な呼吸器障害を生じる。…」


新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)(2021.5.29 アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
「5. (補論)空間噴霧について
世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに対する消毒に関する見解の中で、「室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されない」としており、また、「路上や市場と言った屋外においてもCOVID19やその他の病原体を殺菌するために空間噴霧や燻蒸することは推奨せず」「屋外であっても、人の健康に有害となり得る」としています。また、「消毒剤を(トンネル内、小部屋、個室などで)人体に対して空間噴霧することはいかなる状況であっても推奨されない」としています。(5月15日発表)
また、米国疾病予防管理センター(CDC)は、医療施設における消毒・滅菌に関するガイドラインの中で、「消毒剤の(空間)噴霧は、空気や環境表面の除染方法としては不十分であり、日常的な患者ケア区域における一般的な感染管理として推奨しない」としています。
参考:WHO「COVID-19に係る環境表面の洗浄・消毒」(2020年5月15日)
参考:米CDC「医療施設における消毒と滅菌のためのCDCガイドライン2008」

これらの国際的な知見に基づき、厚生労働省では、消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしていません。薬機法上の「消毒剤」としての承認が無く、「除菌」のみをうたっているものであっても、実際にウイルスの無毒化などができる場合は、ここに含まれます。

これまで、消毒剤の有効かつ安全な空間噴霧方法について、科学的に確認が行われた例はありません。また、現時点では、薬機法に基づいて品質・有効性・安全性が確認され、「空間噴霧用の消毒剤」として承認が得られた医薬品・医薬部外品も、ありません。」


独立行政法人国民生活センター 報道発表資料
除菌や消毒をうたった商品について正しく知っていますか? -新型コロナウイルスに関連して- (2020.5.15)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20200515_2.pdf

「4.消費者へのアドバイス
(1)手指からの新型コロナウイルスの除去には、流水と石けんを使った丁寧な手洗いが有効です。手洗いができない場合に消毒効果が期待されるものとしては、70%のエタノールのようなアルコールが挙げられます。流水と石けんを使った丁寧な手洗いの後にアルコール消毒液を使用する必要はありません

(2)次亜塩素酸ナトリウムは家庭用の塩素系漂白剤の成分です。食器・ドアノブ等の身近なものを消毒するためには、家事用手袋を着用し、次亜塩素酸ナトリウムを水で 0.05%に薄めて拭いた後、水拭きをしましょう。その際、忘れずに換気をしましょう。噴霧については、吸ったり目に入ったりすると健康に害を及ぼす可能性がありますので、絶対に行わないでください。

(3)除菌や消毒をうたうような商品を購入する際や使用する際は、成分は何か、使用してもよい場所はどこか、希釈して使用する商品なのか等、広告や表示をよく確認してから使用するようにしましょう

(4)メタノールは人体への毒性が高いものですので、絶対に消毒用として使用しないでください。また、高濃度のアルコールは可燃性なので、使用する際は火気を避け、換気をしましょう」


消費者庁 「株式会社 Nature Linkネイチャーリンクに対する景品表示法に基づく措置命令について」(2021.1.15) https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_210115_02.pdf

「…本件2商品を身に着ければ、本件2商品から発生するイオンの作用により、いつでもどこでも身の回りの空気を清浄にして、空気中に浮遊するウイルス、花粉、アレル物質、PM2.5、細菌等が人体に及ぼす影響を軽減する効果が得られるかのように示す表示をしていた。… 前記⑵アの表示は、それぞれ、本件2商品の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示すものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること。…」


公益財団法人日本学校保健会 
感染症 > Q&A 二酸化塩素による除菌等をうたった製品の使用について(2014/03/12)
https://www.gakkohoken.jp/column/archives/74

Q:二酸化塩素ガスによる環境消毒の是非について
「…診療所内などの環境消毒に二酸化塩素ガスを使用することは毒性及び効果などの点において勧められない。
なぜなら、本ガスが眼や呼吸器系の粘膜を刺激して、咳嗽や喘息などの原因となる危険性があるからである。また、汚れが付着した環境に対するガス燻蒸法の消毒効果は弱い。」

Q:二酸化塩素による除菌等をうたった商品について
「…日本においてウイルス感染を予防できる旨を商品の効果・効能として表示するには厚生労働大臣による医薬品としての製造販売承認が必要である。しかし、現状としては医薬品として販売されている製品はなく、雑貨として販売されているにもかかわらず不適表示・広告している製品がみられることから注意が必要です。」


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