02-1_1_04 香料化学物質規制 EUと日本の比較

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(2022.1.24)

EU化粧品指令では1,600種類以上の化学物質が規制を受けており、26の化学物質がアレルゲンとしてラベルに掲載するよう法規制(02-1_1_03 EU化粧品指令 EUにおける香料化学物質の規制を参照)を受けていますが、日本ではそのような表示義務はありません。2021年8月現在、日本では香料成分について法規制はなく、安全性についてはメーカーに任されています。

ただ、PRTR(環境汚染物質・排出移動登録)制度で安息香酸ベンジル、ゲラニオール、酢酸リナリルなど香料成分が幾つか指定物質候補にはなっています。

厚生労働省 化粧品基準(薬事法第42条第2項の規程に基づき、化粧品への配合に規制がある物質 平成12年 約100物質が規制を受けている):https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/keshouhin-standard.pdf


香料の原料として使われる「シアン化ベンジル」について、日本とEUの公的な化学物質のデータベースを検索して比較しました。

Benzyl cyanide(シアン化ベンジル CAS番号: 140-29-4 MITI番号:3-1819)は、他の化学物質と同様、化学名、一般名、別名があり、以下のように法律や取り扱う団体などによって違う名前で呼ばれています。「飲み込むと有毒・皮膚に接触すると有毒・吸入すると生命に危険・強い眼刺激・長期にわたる、または、反復ばく露により中枢神経系、呼吸器系の障害」であることが知られています。EUでは化粧品に香料として入れることが禁止されていますが、日本では禁止されていません。

シアン化ベンジル:KIS-NET
フェニルアセトニトリル:化審法 既存点検 分解性蓄積性
ベンジルシアニド:毒物及び劇物取締法(毒劇法)
PHENYLACETONITRILE:logP実測値(文献調査)-Chemical Reviews vol 71 Number 6 December 1971 他


シアン化ベンジルの日本での規制について

nite (独立行政法人 製品評価技術基盤機構)の化審法データベースでCAS番号140-29-4で検索したところ、「既存化学物質*」であって、試験データ、法規制のデータ、基準値の該当データはなし。:https://www.nite.go.jp/chem/jcheck/searchresult.action?request_locale=ja

Webkis_Plus(国立研究開発法人国立環境研究所の化学物質データベース )でCAS番号140-29-4で検索したところ劇物に指定されているが、リスク関連文書、使用基準値、許容濃度、PRTR対象物質選定基準、いずれも該当データなし。:https://www.nies.go.jp/kisplus/dtl/chem/BNT00505

・NITE-CHRIP (NITE 化学物質総合情報提供システム) 毒物及び劇物取締法 政令第2条第1項第32号で劇物に指定されている:

https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/cmpInfDsp?cid=C005-186-98A&bcPtn=5&shMd=0&txNumSh=MTQwLTI5LTQ=&ltNumTp=1&ltNumMh=0&txNmSh=&ltNmTp=&ltNmMh=1&txNmSh1=&ltNmTp1=&txNmSh2=&ltNmTp2=&txNmSh3=&ltNmTp3=&txMlSh=&ltMlMh=0&ltScDp=&ltPgCtSt=100&rbDp=0&txScSML=&txScSML2=&ltScTp=1&txUpScFl=null&hdUpScPh=&hdUpHash=&rbScMh=1&txScNyMh=&txMlWtSt=&txMlWtEd=&err=

http://www.nihs.go.jp/law/dokugeki/dai2-geki.pdf

*既存化学物質の定義:厚労省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/roudoukijun/anzeneisei06/01c.html
上記ページより引用:「労働安全衛生法において「既存化学物質」である化学物質については届出の必要はありません。既存化学物質とは、次の1~4に該当する化学物質をいいます。なお、労働安全衛生法における既存化学物質については、下記ホームページで検索することができます。厚生労働省『職場のあんぜんサイト』:http://anzeninfo.mhlw.go.jp/index.html 」

厚労省 『職場のあんぜんサイト』でCAS番号140-29-4 で検索した情報 (フェニルアセトニトリル): https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/140-29-4.html

・注意喚起語:危険
・危険有害性情報:飲み込むと有毒 / 皮膚に接触すると有毒 / 吸入すると生命に危険 / 強い眼刺激 / 長期にわたる、または、反復ばく露により中枢神経系、呼吸器系の障害
・「推奨用途及び使用上の制限 合成ペニシリンまたはバルビツール酸塩の製造、繊維の漂白剤の合成及び殺虫剤の製造における中間体、香水及び香料(「蜂蜜-タイプ」エステル化合物であるフェニル酢酸)の原料」(2010.3.31)


EU化粧品指令 (別表II** / 化粧品に禁止の化学物質リスト)では香料として使用することが禁止されている物質「Ref No. 424 (Phenylacetonitrile)」として掲載されている。(02-1_3 EUにおける香料化学物質の規制を参照

”Cosmetic Products Regulation, Annex II – Prohibited Substances
This list contains substances which are banned from use in any cosmetic products marketed for sale or use in the European Union.” ref no: 424
https://echa.europa.eu/legislation-obligation/-/obligations/100.004.919

**Annex II:別表II / 化粧品に禁止の化学物質リスト:https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=CELEX%3A02009R1223-20210526

欧州化学機関 ETCHA( European Chemicals Agency)のサイトでCAS番号140-29-4フェニルアセトニトリルを検索:https://echa.europa.eu/substance-information/-/substanceinfo/100.004.919

CAS no.: 140-29-4(Benzyl cyanide/Phenylacetonitrile): EC number: 205-410-5 Mol. formula: C8H7N

「吸引すると致死的、飲み込むまたは皮膚へ接触すると有毒」
”Danger! According to the classification provided by companies to ECHA in REACH registrations this substance is fatal if inhaled, is toxic if swallowed and is toxic in contact with skin.”