02-2_2_04_カナダ労働安全衛生センター(CCOHS) の無香料ポリシー

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カナダにおける労働安全衛生関係の情報活動の中心的な役割を担っているカナダ労働安全衛生センターの無香料ポリシーは、わかりやすく必要な項目がまとまっており、無香料ポリシーを作成するときに参考になります。

CCOHS (Canadian Centre for Occupational Health and Safety, カナダ労働安全衛生センター): カナダにおいては各州(10 provinces)及び準州政府(3 territories)が安全衛生を含む労働関係法規を管轄しており,連邦政府の関与はあまりない。したがって,各州・準州の独自の法令に従って活動している。また、労働安全に関する調査・研究に関しては,総合的な機関はなく,大学や研究所が特定の分野の研究を行っている。CCOHSはカナダにおける労働安全衛生関係の情報活動の中心的な役割を担っており,法令及び論文等の情報収集を行う他,対外的な広報・情報提供活動を担っている。( 国際安全衛生センター海外調査ウエブサイトより抜粋)

Health Canada, カナダ保健省:カナダ連邦政府内で、カナダの公衆衛生に関する行政、規制、業務を司る省庁

(公開日: 2023.3.5 最終更新: 2023.3.5 )


カナダ労働安全衛生センター「 職場のための無香料ポリシー」:CCOHS (Canadian Centre for Occupational Health and Safety) “Scent-Free Policy for the Workplace”(2019.1.4)

  1. 「無香料」とは何を意味しますか?
  2. 香料が健康問題を起こす可能性はありますか?
  3. どんな製品がenvironmental sensitivities(環境過敏症/環境不耐症)と関連付けられますか?
  4. どのようなタイプの製品に香料が入っていますか?
  5. 香料には発がん性物質もあると聞いたが本当ですか?
  6. 製品や化粧品のラベル表示にルールはありますか?
  7. カナダには環境過敏症/環境不耐症をカバーする法律はありますか?
  8. 職場で無香料ポリシーを実行するためにはどういう手順を踏むべきですか?
  9. 無香料ポリシーの例文はありますか?
  10. 無香料ポリシーの告知文には何を記載すれば良いですか?
  11. 従業員に対してどのようなアンケートを取れば良いですか? 
  12. 無香料ポリシーに替わるものはありますか?

「無香料」とは何を意味しますか?

香りについて語る時、通常は化粧品(香水、メイクアップ用品、シャンプー、制汗剤など)または芳香剤や洗剤の成分や化学物質のにおいまたは悪臭を意味します。

残念ながら無香料(scent-free, fragrance-free or unscented)の正確な定義はありません。unscented(香りをつけていない)とラベルに記載されていても、成分のにおいをマスキング(隠す)するための香料が入っていることがあります。ただし成分構成について下記のように明記する必要があります。しかし、これらの用語は別々の製造者によって一貫性がなく使用されていることに注目することが重要であると共に、これらの用語は製品を選ぶにあたってのガイドラインとしてはお粗末なものと言えます。

―臭気または香気* :「もし製品の成分が香料を追加または変更するためにアップデートされた場合は、その結果として発生するにおいを説明する「さわやかな香り」「フローラルの香り」「レモンの香り」などの用語を製品説明に付け加えることができる。「無香料(fragrance-free または unscented)」という用語は製品が無臭、またはほとんど無臭の場合に付け加えることができる。」

*出典:( カナダ保健省 [規制に関する指示 DIR2013-02, ] P.7『Odour or fragrance』)より:Regulatory Directive DIR2013-02, Notification/Non-notification. Health Canada 

香料が健康問題を起こす可能性はありますか?

香料入りの製品に含まれる成分・化学物質が健康問題を起こす時には、下記の症状のいくつか、または全ての症状が起こることが報告されています。

・頭痛/めまい・立ちくらみ/吐き気/疲労感・だるさ/不眠/しびれ/上気道症状/息切れ/皮膚炎/不安感/精神錯乱/集中困難

これらの症状の重さは様々です。軽い症状の人もいれば、障害を負ったり、原因物質を避けるために公共の場に行くなど多くの「普通の」行動を諦めなければならない人もいます。その結果、うつ状態や不安感を訴える患者さんもいます。

これらの反応は、環境過敏症/環境不耐症と呼ばれる症状として知られています。ウイメンズカレッジ病院によれば

環境過敏症(ES)とは、特定の化学物質やその他の環境物質に、多くの人が耐えられる程度の低いレベルでさらされたときに、症状が現れる慢性的な状態を指します。症状の程度は、軽度なものから衰弱するものまで様々です。

ESは、多重化学物質過敏症(MCS)、化学物質不耐症(chemical intolerance)、環境過敏症(environmental hypersensitivity)、環境病(environmental illness)、毒物誘発性耐性喪失(toxicant-induced loss of tolerance)、特発性環境不耐症(idiopathic environmental intolerance)とも呼ばれています。

また、アレルギーや喘息の患者さんや他の疾患(例:肥満細胞症など)をお持ちの方などは、たとえ微量であっても、香料入り製品に含まれる成分や化学物質に触れることで上記以外の症状を誘発することがあります。 そのような状況では、健康への影響は深刻になる可能性があります。

どんな製品がenvironmental sensitivities(環境過敏症/環境不耐症)と関連付けられますか?

どのような製品や化学物質も、環境過敏症に関連する可能性があります。カナダ公共サービス委員会は「環境過敏症の人は、食品、化学物質、環境にある物質に対して、単独または複合的に健康に有害な反応を示す可能性がある」と述べています。環境過敏症には、洗浄剤、ほこり、香水、建築材料など、特定のアレルゲンに対する有害反応も含まれます。

当記事では、香りのある製品による過敏症に焦点をあてています。無香料ポリシーの作成にあたって参考になるページがサイト内にありますのでご参照ください:

室内空気の質 – 一般 (Indoor Air Quality – General)

室内空気環境 – カビと真菌 (Indoor Air Quality – Moulds and Fungi )

職場で環境過敏症/環境不耐症の問題に対処する場合、考えられるすべての原因に対処することを心がけましょう。

どのようなタイプの製品に香料が入っていますか?

香りを作り出すために使用される成分や化学物質は、以下のように非常に多くの製品に含まれています(これらのリストに載っていないタイプの製品が反応を引き起こす可能性があることに留意してください):

シャンプー、コンディショナー、ヘアースプレー、デオドラント(汗臭・体臭防止用品)、コロン、アフターシェーブローション、フレグランス、香水、ローション、クリーム、ポプリ、工業用/家庭用化学物質、せっけん/合成洗剤/柔軟仕上げ剤、化粧品、芳香剤/消臭剤、オイル類、キャンドル、オムツ、ゴミ袋

「無香料」をうたう製品の中には、化学物質の使用によって香料のにおいを隠しているものもあることを忘れてはいけません。敏感な方の周囲で香料付き製品を使用する場合は、その製品について事前によく調べるようにしてください。

香料以外の誘因として、以下のようなものにさらされた場合の健康被害が報告されています。

揮発性有機化合物(例:ガソリン、接着剤、塗料、溶剤、洗浄剤など)/自動車の排気ガス/殺虫剤/花粉、カビ

香料には発がん性物質もあると聞いたが本当ですか?

配合にもよりますが、香料や香料入り製品には、職業環境やラボでの動物実験でがんを引き起こすと判断された化学物質が含まれていることがあります。

化学物質の体への影響については、「何が化学物質を有毒にするか(What makes chemicals poisonous? に詳細な情報があります。

製品や化粧品のラベル表示にルールはありますか?

あるにはあるが、現在のラベル表記のルールはすべての情報を提供するものではない場合があります。

例えば、食料品店や金物店などで一般消費者向けに販売されているクリーナーや芳香剤などの製品には、消費者向けのラベル表示のみが義務付けられています。これらのラベルは、腐食性(皮膚や目への火傷)、爆発、火災、毒などの直ちに起こる危険性に焦点を当てたもので、パッケージや製品に記載されるのは、特定の成分のみです。製品に含まれるすべての成分を調べるには、製造元に直接問い合わせる必要がある場合があります。

カナダ保健省の法律では、化粧品の外箱にラベルを貼ることが義務付けられています。このラベルには、化粧品成分国際命名法(International Nomenclature of Cosmetic Ingredients system)

のリストに載っている全成分が記載されています。このルールは、消費者が購入する化粧品について十分な情報を得た上で選択するために必要な情報を提供するものです。(訳注:洗浄剤などの日用品についての言及ではありません)

カナダには環境過敏症/環境不耐症をカバーする法律はありますか?

はい。連邦および州の人権法に基づき、配慮が必要です。 詳しくは、最寄りの人権委員会( Employment and Human Rights) にお問合せください。雇用主は、個人差があることを認識し、その概念をできるだけ積極的に職場の基準やポリシーに組み込んでいく必要があります。

職場で無香料ポリシーを実行するためにはどういう手順を踏むべきですか?

通常の職場ポリシー(方針)と同様に、以下のことを必ず考慮してください:

・問題の程度を把握するために、従業員に対してアンケートや調査を行う。同時に意見や提案も集め、職場に適した方針を立てるのに役立てる。(アンケートのサンプルは、この文書の最後にあります)。

・職場の無香化とその遂行を監督する責任者を1人指名するか、すべてのグループ(従業員、組合、経営陣)を代表するメンバーで構成される委員会を設立する。

・安全衛生委員会または労働者代表を参加させ、経営陣が責任を持って参加するという言質を最初に得ておく。

・無香料ポリシー案の作成、見直し、実施のための期限を設定し、それを守る。

・従業員を教育する。給与袋にパンフレットやチラシを同封したり、社内報に記事を掲載したり、プレゼンテーションを行うなどの方法がある。いずれの場合も、香りに関連する健康上の懸念と、なぜ無香料ポリシーが必要なのかを全従業員に知らせることが目的。

・無香料ポリシーを実施するまでに、全従業員がこのポリシーを十分に理解し、何をしなければならないかを知っているかどうか確認する。

・従業員から寄せられた懸念には、率直かつ正直に対処する。無香料ポリシーは、単に特定の臭いが嫌いという理由ではなく、医学的な懸念の結果として実施されているということを周知徹底する。

・無香料ポリシーがすべての人(訪問者、患者などを含む)に適用されることを明確にする。

・無香料ポリシーを成功させるためには、すべての人の協力が不可欠であることを明確にする。もし香りをつけていたら、何をするよう求められるかを明示する(例:洗い落とす、無香料ティッシュで落とす、服を着替える、別室にいる、など)

・現地の法令を検索し、職場の無効化をサポートする文書があれば利用する

・無香料ポリシーを香水やコロンに限定しない。上記のように、多くの建材、洗浄剤やパーソナルケア製品にも香料や化学物質が含まれている。

・認可された無香料製品のリストと、それらがどこで入手できるかを掲示する。

・現在使用している製品、および使用を検討している製品の安全データシート(SDS)をすべて確認する。原材料が許容範囲内であることを確認する。無香料を謳う製品の中には、本当に無香料なのではなく、匂いを隠すために追加の化学物質を使用している場合があることを忘れないように。

・製品を大量に購入する前に、限られた場所で試用する。

・工事や改造、ワックスがけ、洗浄、塗装、農薬散布などが行われることを1週間前に告知し、影響を受ける従業員がその間にスケジュール調整をしたり、業務を変更したりできるようにする。

・すべての予約カード、レターヘッド、客室予約通知書、求人票などに無香料ポリシーを実施している旨の告知を入れる。(訳注:宿泊施設などの場合と思われる)

・「無香料」の看板の文言と、看板を掲示する場所を決める。

・経験や新しい知識によって無香料ポリシーの内容が変更される可能性があることを周知する。

無香料ポリシーの例文はありますか?

無香料ポリシーは従業員の健康上の懸念に基づいて作られなくてはなりません。また、ポリシーは会社全体に一律に適用されなければならないことに注意してください。

無香料ポリシーの文例

ポリシー実施の目的:香料入り製品による健康への懸念が高まっていることから、ABC Company Inc.は、すべての従業員と訪問者に香料がない環境を提供するために、この無香料ポリシーを制定しました。

無香料ポリシーとは:香りのある製品の使用は、建物内では常に禁止されています。また、清掃に使用する材料もすべて無香料のものでなくてはなりません。地元で入手可能な無香料製品のリストは、安全衛生管理室から入手可能です。

無香料ポリシー実施の手順:従業員は、建物内に掲示された標識、無香料マニュアルやチラシなどを通じてこのポリシーを知らされ、オリエンテーションとトレーニングを受けます。訪問者は、掲示によってこのポリシーを知らされ、社員から説明を受けます。

このポリシーは、2023年04月01日に発効します。

無香料ポリシーの告知文には何を記載すれば良いですか?

告知文は会社の建物の入り口付近に掲示してください。また、来客が多い場合は、名刺やレターヘッド、販促物などに記載することも有効です。文例としては、以下のようなものがあります。

ABC社で働く人の中には、さまざまな化学物質や香料入り製品によって健康を害する人がいると報告されています。私たちは、彼らの健康上の懸念に対応するための配慮をしており、皆さまの協力をお願いしています。

健康問題に対応するため、ABC社は「無香料ポリシー」を策定しました。ヘアスプレー、香水、デオドラントなどの香料入り製品は、呼吸困難や頭痛などの原因になる可能性があります。スタッフおよび訪問者は、このオフィスに来る際にはこれらの製品を使用しないことが求められています。

ABC社は無香料の環境です。仕事中は香料入り製品を使用しないようお願いします。

従業員に対してどのようなアンケートを取れば良いですか? 

質問の文例:

  • 香料入りの製品によって健康上の問題が起こったことがありますか?ーはい、の場合、香料入り製品によってどのような影響を受けましたか?
  • 当社は従業員に香料入り製品の使用を減らすためのプログラムを提供するべきだと思いますか?(はい、いいえ)
  • 我が社はどのように無香料化すればよいと思いますか?
    ―香りの強い製品から、無香料や低香料の製品に変更する
    ―香り付きの製品に関連する健康上の懸念について、従業員への啓蒙活動を行う
    ―香料を減らすことを動機付ける何かを提供する(その内容:  )
  • 出社前に香料入りのシャンプー、石鹸、ハンドローション、香水、コロン、ヘアスプレー、デオドラントなどを使用していますか?(はい、いいえ、わかりません)
  • ABC社の無香料ポリシーを受け入れていただけますか?(はい、いいえ)
  • もし無香料ポリシーを受け入れるつもりがない場合、その理由をご記入ください。
  • その他、何かご意見があれば書いてください:

無香料ポリシーに替わるものはありますか?

  • 健康問題を起こすにおいの正確な発生源を特定する。
  • 建材や洗剤など掃除用品などから揮発する香料や化学物質を削減する。
  • 室内の空気の質を良好に保つ。新鮮な空気を室内に取り入れ、香料が空調設備によって建物全体に循環していないことを確認する。
  • 場合によっては、香料の使用を続けている個人に働きかける必要もあります。この要請は、人事部、上司、管理職、組合、または組織で定められた方針と手順の条件に従って行うことができます。なお、環境過敏症に苦しむ個人が香料の使用者にアプローチする必要はないことに注意しましょう。他の人権問題と同様に、被害を受けている個人を特定する必要はありません。(最終更新日 2019.1.4)

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