02-2_2_02 シュタインマン博士 香料関連論文

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(2023.4.12)

アン・シュタインマン(Anne Steinemann)博士は1993年に米国スタンフォード大でCivil and Environmental EngineeringのPhDを取得したのち、汚染物質による健康被害、日用品のテストと評価、暴露のアセスメントの専門家として国際的に2,000以上のメディアで広く研究を発表、多くの政府、業界、組織に環境汚染、公衆衛生、水質管理などについてアドバイスをしています。現在メルボルン大学メルボルン工学部、ジェイムズクック大学科学・工学学部工学科教授。

Dr. Anne Steinemann
https://www.drsteinemann.com/


Ten questions concerning fragrance-free policies and indoor environments (「10の室内環境と無香料ポリシーについての問題」) 』 A. シュタインマン (2019.3)

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0360132319302148

主要なポイント:

・香りつき日用品は健康への悪影響、また社会的な悪影響と関連がある
・香料は建物内の空気環境全体に広がる
・無香料ポリシーは建物の利用者と市民全体に有益である
・無香料ポリシーは調査対象の大多数に支持されている

要約より抜粋:

・室内空気環境は健康や生産性への悪影響と関連があり、国際的な懸念事項である
・一般的な室内空気の汚染源は、芳香剤、消臭剤、洗剤、パーソナルケア用品など、香料入りの日用品である。
・香料入り製品は、呼吸困難、頭痛などの健康問題を起こし、出勤や社会活動への参加を不能にする
・こういった問題に対応するために、世界中の職場、学校、医療機関、公共の建物、その他の室内環境で無香料ポリシー(fragrance-free policies)が採用されている。
・全国的な調査で、無香料ポリシーを支持する人の方が香料のある環境を望む人よりも多かった。

別表Aの無香料ポリシー例より教育機関関連を抜粋し翻訳したものが『01-3a_2 香害対応・海外の事例』からダウンロードできます:


International prevalence of fragrance sensitivity (香料に対する過敏症状の国際的な有病率)』A. シュタインマン (2019.6)

https://link.springer.com/article/10.1007/s11869-019-00699-4

要約より抜粋:

・消臭芳香剤、洗剤などの香料入り製品への暴露、(大気への)排出は健康問題や社会的なインパクトと関連がある。米国、オーストラリア、英国、スエーデンの4つの国において、香料入り日用品の一般的な人口への影響を調査した。

・米国1137; オーストラリア1098; 英国1100; スエーデン1100人を調査したところ、32.2%の成人が香料入り製品で健康に問題を起こしたことがあると回答した。

・17.4%は消臭・芳香剤、15.7%は香料入り洗剤で清掃された部屋、にいることで健康に問題があった。(呼吸困難 16.7%、粘膜の症状 13.2%、頭痛 12.6%、皮膚症状 9.1%、喘息発作 7.0%)

・全体の9.5%は重症で、機能障害を起こし、9.0%は職場での香料入り製品への暴露で1年以内に欠勤したり職を失ったりしている。このような欠勤・失職による経済的なロスは4カ国で1年につき1,460,00,000,000 USドル(1460億ドル)を超えると試算される。

・これらの国の大多数は職場、医療機関、プロフェッショナルな(サービス)、ホテル、飛行機が無香料であることが好ましいと回答している。


National Prevalence and Effects of Multiple Chemical Sensitivities (化学物質過敏症MCSの全国的有病率とその影響)』A. シュタインマン (2018.3)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5865484/

要約より引用:

「2016年にクロスセクショナルに全米の成人の1,137人を対象に行った調査では、全体の12.8%が化学物質過敏症診断済み、25.9%が化学物質過敏状態の自覚がありました。化学物質過敏状態の86.2%は、香料入り日用品に暴露すると頭痛などの健康問題を、71.0%は喘息、70.3%は消臭剤などの芳香剤を使った場所へ入れない、60.7%は1年以内に職場での香料の使用によって欠勤、または失職を経験しています。

この10年間で、化学物質過敏症の有病率は、診断済みは300%、自覚的な過敏状態では200%増加しています。香料入りの製品への暴露を減らすことは、健康や社会的な悪影響を減らすことにつながります。」


Fragranced consumer products: effects on autistic adults in the United States, Australia, and United Kingdom (香料入り製品:米国、オーストラリア、英国における自閉症(自閉症スペクトラム障害)の成人に対する影響) 』A. シュタインマン (2018.9)

Free PMC* Full Text:  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6244938/

要約より抜粋:

・洗剤、芳香・消臭剤、パーソナルケア用品などの香料入り日用品は空気の質や健康に悪影響を与える。この調査は米国、オーストラリア、英国の18歳〜65歳の成人(n = 米国1137; オーストラリア1098; 英国1100)のうち、自閉症、自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断されたと回答した成人(全体の4.3%、142人)に香料入り製品が与える影響を調査した。

・香料入り製品によって83.7%が頭痛、34.3%が神経系の問題、44.7%が呼吸器の問題、35.9%が喘息発作を経験。62.9%が芳香・消臭剤、57.5%が乾燥機などから排出される洗濯用品の香料、65.9%が香料入り製品で清掃された部屋にいること、60.5%が香料入り製品を使用した人の近くにいた場合に健康への悪影響を経験している。

NLM** 要約、類似の論文、引用論文など: 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30546500/


『香料入り製品:排気への曝露とその影響』A. シュタインマン (2016.10.20)
Published online 2016 Oct 20. doi: 10.1007/s11869-016-0442-z
PMCID: PMC5093181 PMID: 27867426
“Fragranced consumer products: exposures and effects from emissions” Anne Steinemann:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5093181/

概要から引用:
掃除用具、芳香剤、パーソナルケア製品など、香りのついた消費者向け製品は、室内空気汚染物質や個人への曝露の主な原因となっています。これまでの研究で、香りのある製品は健康への悪影響を引き起こす可能性があり、職場や公共の場にも影響を及ぼすことが示されています。本研究は、米国人集団における香り付き製品に関連する曝露とその影響を多面的に検討した初めての研究です。本研究では、フレグランス製品への曝露の有病率と種類、関連する健康影響、製品の排出に関する認識、フレグランスフリー政策や環境に対する嗜好を調査しました。データは、米国の成人の全国代表集団(n = 1136)を対象としたオンライン調査により収集されました。

全体として、34.7%の人が、香りのある製品に触れたときに、片頭痛や呼吸困難などの健康問題を訴えました。さらに、15.1%の人が、職場での香料製品への曝露が原因で、勤務日数や仕事を失ったことがあると回答しています。また、20.2%の人が、芳香剤や香水などの香りがすると、その店に入ったものの、すぐに出て行ってしまうと答えています。50%以上の人が、職場、医療施設や専門家、ホテル、飛行機が無香料であることを希望しています。

先行研究では、一般的な香料製品は、「エコ」や「オーガニック」と呼ばれるものであっても、有害な大気汚染物質を放出していることが判明しましたが、人口の3分の2以上がこのことを知らず、60%以上が、そのような汚染物質を放出していると知ったら、香料製品を使い続けないだろうと述べています。本調査の結果は、香料が一般の人々の健康に悪影響を及ぼす可能性があることを強く示すものです。また、本研究は、無香料ポリシーなどで香り付き製品への曝露を減らすことが、リスクを減らし、空気の質と健康を改善するための、比較的簡単で費用対効果の高い方法であることを示しています。


PubMed Central® (PMC*) :NLMの生物医学、生命科学のフリー、フルテキスト文献掲載サイト

NLM**: National Library of Medicine : 国立医学ライブラリ[ NIH, National Institute of Health (米国国立衛生研究所)のライブラリ]

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