(2022.4.19)
環境中に放出された香料は個人レベルの被害を超え、実際に大気汚染の原因になり、水棲生物など生態系に蓄積され、母乳を関して乳児に移行していることがわかっています。環境省は家庭用品から排出されるVOC(揮発性有機化合物)について推計を始めていますが、香料や防虫剤などは大気汚染の原因になっているというエビデンスがありながら、推計の対象外としています。VOCは光化学スモッグの原因物質のひとつで、トルエンやキシレンなど、よく使われるものだけでも約200種類あると言われています。香料の製造には毒性の強いVOCであるトルエンやキシレンが使用され、柔軟剤からもVOCが検出されています。
トルエンやキシレンは中毒性があり、吸引しているうちに依存症を起こし、回復不能の脳障害を起こす恐れがあります。皮膚からも吸収される有毒物質を含む香料入り柔軟剤や合成洗剤などを使用した衣類を肌につけ、「よい香り」を吸引しているうちに香料だけでなく、トルエン中毒になる可能性も考えられます。香料、VOCの環境汚染について、02-1_1_01 柔軟剤・合成洗剤の成分とその問題も合わせてご参照ください。
「有機溶剤は何故毒性が高いの? – 三協化学株式会社」:https://www.sankyo-chem.com/wpsankyo/2227「これらは中毒性があったりシックハウス症候群を起こす原因にもなります。 継続的に吸入したりすると最悪回復不能の脳障害を起こす恐れもあります。 呼吸器や消化器からだけでなく、皮膚にその物質が付着すれば皮膚からも取り込まれやすいため危険性が高いと言われています。(図書館注:「有機」とは炭素を含む化合物という意味であり、安全な物質という意味ではありません。VOC, Volatile Organic Compoundのオーガニックも炭素を含むという意味です)」
『香水や家庭用洗剤、実は車と同じくらい環境破壊している⁉︎』Bazzar (2018.3.22)
記事より引用「どの家庭にもある香水、塗料、印刷用のインク、殺虫剤、洗剤などの生活用品。実は車の排気ガスと同じくらい環境に悪影響を及ぼすって知ってた?(中略)2018年2月15日、科学系の米ニュースサイト『サイエンス・デイリー』に掲載された論文によると、米コロラド大学ボルダー校の科学者たちはアメリカ海洋大気庁(NOAA)の協力のもと、ロサンゼルスにて生活用品から排出される揮発性有機化合物(VOC)を調査」
『Those scented products you love? NOAA study finds they can cause air pollution(あなたの好きな香料入り製品が大気汚染を起こすーNOAAの調査が発見)』National Oceanic and Atmospheric Administration: アメリカ海洋大気庁 Theo Stein (2018.2.15)
記事より引用「NOAAが主催した研究によれば、香水、塗料、その他の香料入り日用品から揮発する化学物質は、ロサンゼルスで車と肩を並べるほどの大気汚染の汚染源となっている」
https://www.noaa.gov/news/those-scented-products-you-love-noaa-study-finds-they-can-cause-air-pollution
『新規有害化学物質「合成香料」によるヒトおよび生態系の汚染とリスク評価に関する研究 平成17年度〜19年度化学研究費補書金 基盤研究(B) 研究成果報告書』
平成20年(2008) 研究代表者 實政 勲 (Sanemasa Isao) 熊本大学 自然科学研究科 教授
研究概要より引用「近年人工香料による水質や魚類等の汚染が報告され、その生物蓄積性や環境リスクが懸念されるようになった。本研究は、人工香料による生態系およびヒトへの汚染状況とそのリスク評価を解析した。始めに有明海の海水と様々な栄養段階の海洋生物を採集・分析したところ、ほぼ全ての試料から環状型香料のHHCB(CAS#:1222-05-5)とAHTN(同:21145-77-7)が検出された。(中略)ヒトの脂肪および母乳を採集・分析したところ、いずれの試料からもHHCBが検出され、日本人における人工香料の汚染が初めて確認された。このことは、授乳により人工香料が母子間移行していることを示しており、化学物質に敏感な乳児への暴露リスクが懸念された。また、5種類の合成香料を対象に甲状腺ホルモンレセプターを介した細胞のアッセイを試みたところ、一部の物質がホルモン撹乱作用を有することが明らかになった。(中略)ヒトへの染拡散や乳幼児へのリスク、さらにホルモン撹乱作用の懸念を考慮すると、2003年に改正された化審法の理念を参照して一部の合成香料の製造・使用について何らかの制限を設ける時期に来ている。」
研究概要、研究成果の目録:
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17310038/
熊本大学 研究成果報告書(論文の本文はほとんど非公開)
https://kumadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=21780&item_no=1&page_id=13&block_id=21
熊本大学 研究成果報告書内の本文公開論文:
『Uptake of Benzene and Alkylbenzenes by Cation- and Anion-Exchange Resins from Aqueous Solutions (陽イオン、陰イオン交換樹脂の水溶液からのベンゼンとアルキベンゼンの摂取)』
https://kumadai.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=22173&item_no=1&page_id=13&block_id=21
環境省は民生品(家庭用品)から排出されるVOCについて推計を始めていますが、芳香剤など家庭用製品、防虫剤、消臭剤、エアゾール噴射剤、香料は「情報の不足」、「その他、自主的取組等に適さないことが明らかなもの 」としてVOCの発生源として推計に含まれていません。なぜ自主的取り組みなどに適さないのか、理由の説明はありません。香料入り製品が大気汚染の原因になっているという米国の公的機関の調査結果があるのですから、VOC削減のためにこれらの香料入り製品も対象に加えてほしいものです。
『[拡張] 揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリについて』揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリ検討会』:https://www.env.go.jp/air/%20air/osen/voc/inventry/2_r2_main.pdf
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